美容室の帳簿の付け方は?帳簿を付ける理由と帳簿を作成するときの注意点を解説
公開日:2024年1月22日
個人で美容室を経営する場合、確定申告を行わなければなりません。
確定申告では事業の売上を記入する欄があるため、日頃から帳簿を付けておくことが大切です。
本記事では、個人経営の美容室が帳簿を付ける理由や、売上台帳などの帳簿の付け方、帳簿を付ける際の注意点について解説します。
美容室で帳簿を付けるべき理由
美容室で帳簿を付けるべき理由は大きく分けて4つあります。
1. 帳簿付けが義務化されている
日本において、事業者は帳簿を付けることが義務付けられています。
かつては、複式簿記による記帳を原則とした青色申告者を除き、白色申告者に記帳義務はありませんでした。
しかし、平成26年以降は法人・個人を問わず、全ての事業者に帳簿付けが義務付けられています。(※)
※参考:国税庁. 「税務手続について~国税通則法等の改正~」. https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/pdf/01.pdf , (2023-11-13).
帳簿を付けていないと、税務調査が入った際、売上を隠蔽するために帳簿を付けていないと判断され、ペナルティを科せられるおそれがあります。
また、青色申告者の場合は複式簿記での記帳が原則とされており、帳簿を付けていないと青色申告の認定を取り消される可能性もあるため、注意が必要です。
そもそも青色申告者は、正式な帳簿を作成することを条件に白色申告者よりも控除が優遇されています。
もし帳簿を付けないまま青色申告を行っていた場合、過去にさかのぼって控除されていた分の追加徴収を命じられる恐れがあることに留意しましょう。
2. 確定申告の手間を省ける
確定申告には事業所得の欄があり、その年の売上を計算して記載する必要があります。
帳簿を付けていれば、帳簿に記載した内容を確定申告書に転記するだけで済むので、領収書やレシートを基に一から計算する必要がなくなります。
確定申告の時期は1カ月間と短いため、帳簿を付けて手間を省いた方が、余裕を持って申告できるでしょう。(※)
※参考:国税庁. 「No.2024 確定申告を忘れたとき」. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm#:~:text=%E6%A6%82%E8%A6%81,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84%E3%80%82 , (2023-11-13).
3. 経営の分析が可能になる
帳簿を付けていると、いつ、どのくらいの売上が出たのか。毎月いくらの経費を使っているのか、などのデータを確認できるようになります。
これらのデータをもとに分析を行えば、コストの削減やマーケティングに役立てることが可能です。
4. 補助金や融資を申請できる
国や自治体では、事業者向けの補助金や助成金などの制度を実施しています。
これらを活用すれば事業資金として役立てることができますが、受給には一定の要件を満たさなければならない他、帳簿の提出などが必要になります。
銀行などの金融機関で融資を受ける場合も同様に、帳簿の提出や提示を求められることがあるため、帳簿を付けておくとスムーズに相談できるでしょう。
日頃から帳簿を付けていれば、補助金や融資の申請を行えるようになり、不足した事業資金の調達を実現できます。
美容室での帳簿の付け方
帳簿や帳簿の付け方にはいくつかの種類がありますが、ここでは、美容室の確定申告や補助金申請などに必要な売上台帳の付け方を3つのステップに分けて説明します。
1. 売上台帳の作成方法を決める
売上台帳の作成方法は大きく分けて4つあります。
それぞれ特徴やメリットが異なるため、比較して自分に合った方法を選びましょう。
手書きで作成
市販のノートや台帳に手書きで項目を記入していく方法です。
パソコンや専用のソフトが不要なので、コストがかからず、すぐに作成できるところが利点です。
ただ、手書きはかなりの手間と時間がかかる上、作成した帳簿を紙で保管しなければなりません。
売上台帳は7年にわたって保管することが義務付けられているため、帳簿が美容室のスペースを圧迫するおそれがあります。(※)
※参考:国税庁. 「記帳や帳簿等保存・青色申告」. https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm , (2023-11-13).
表計算ソフトで作成
Excelなどの表計算ソフトを使って帳簿を付ける方法です。
Web上で公開されている売上台帳のテンプレートを使えば、一から表を作成する手間がなく、すぐに売上を記帳することができます。
関数などの機能を利用すれば売上の計算も容易になるため、手書きよりも記帳の手間を省けます。
また、Excelはパソコンにプリインストールされているケースも多く、新たなソフトの導入コストを削減できるのも魅力の一つです。
会計ソフトを利用する
会計専用のソフトを利用して帳簿を付ける方法です。
会計ソフトには事業者の会計業務を効率化できるさまざまな機能が付帯されており、帳簿作成の手間を省くことが可能です。
機能の一例を挙げると、仕訳入力機能や帳簿の自動作成機能、集計管理機能、経営分析機能などがあります。
表計算ソフトよりも会計業務に特化しているため、細かな機能を利用できるところがメリットです。
2. 記載する項目を決める
売上台帳に記載する項目を決めます。
項目数に制限はありませんが、国税庁では資産の譲渡(商品の販売やサービスの提供)などを行った場合の帳簿への記載事項として、以下の項目を掲げています。
1.取引の相手方の氏名または名称
2.取引年月日
3.取引内容
4.税率の異なるごとに区分した支払対価の額
ただし、美容院のように不特定多数の人を相手に取引する事業の場合、1は省略することが可能です。(※)
※参考:国税庁. 「No.6621 帳簿の記載事項と保存」. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6621.htm , (2023-11-13).
以下では、上記2~4の項目を含め、美容室の売上台帳に記載する主な項目を7つご紹介します。
タイトル・記帳期間
他の書類と混ざってしまわないよう、タイトルと記帳期間を明記しておきましょう。
例えば、2023年10月(10月1日~31日)売上、などと記載しておけば、どの期間の売上台帳なのか判別しやすくなります。
記帳者の名前・屋号
売上台帳の対象となる店の名前(屋号)あるいは個人事業主の名前を記載します。
売上台帳の所在地を明らかにする項目なので、明記しておいた方がよいでしょう。
取引年月日
取引を行った年月日を記載します。
取引内容
取引の具体的な内容を記載します。
美容院の場合は、シャンプー、カット、カラーなどメニューの名前を記載すればOKです。
顧客1人ごとに記載するのではなく、同じメニューを利用した顧客がいればまとめて計上してかまいません。
例えば、10月10日にカットを利用した顧客が5人いたのなら、取引内容にカットと記載し、客数および数量の項目に5と記載します。
シャンプーやコンディショナーなどを販売した場合は、商品名と販売個数を記入しましょう。
税率の異なるごとに区分した支払対価の額
いわゆる売上金額のことです。例えば、10月10日に3,000円のカットサービスを受けた顧客が5人いたのなら、3,000円×5人=1万5,000円というように記入します。
美容院の場合、取引内容に軽減税率は適用されないので、税率を区分して記載する必要はないでしょう。
支払方法
売上がどのような方法で支払われたのかを記載します。
項目はサロンごとに異なりますが、現金・クレジットカード・電子マネーなどが挙げられます。
3. 帳簿を付け、保存する
2で決めた項目に必要事項を記入して帳簿を付けます。
作成した帳簿は紙または電子データとして保存することになります。
電子データとして保存する場合は、電子帳簿保存法に基づく必要があるので、要件をよく確認しておくことが大切です。
美容室で帳簿を付けるときの注意点
美容室で帳簿を付けるときに気を付けたいポイントを3つご紹介します。
1. 記入漏れや記入ミスに注意
帳簿を付ける際、記入漏れや記入ミスが起こることは少なくありません。
漏れやミスがあると正確な売上を把握できなくなる他、補助金や融資を受ける際に書類不備とみなされたり、税務調査で厳しく追及されたりする恐れがあります。
帳簿を付ける際は記入漏れやミスがないか、しっかりチェックするようにしましょう。
2. 定期的に記帳する
帳簿に記入するタイミングは任意ですが、あまり長い間放置していると、まとめて記入する際に手間と時間がかかってしまいます。
一度に記入する項目や計算の回数が多ければ多いほどミスも発生しやすくなるので、帳簿付けはなるべくこまめに行うことをおすすめします。
1日の終わり、あるいは週末に行うなどのルールを設けておくと帳簿付けが習慣化し、記入漏れなどのミス防止にもつながるでしょう。
3. 帳簿の保存期間を遵守する
前述のように、帳簿は原則として7年間保存しておく義務があります。
紙で保存する場合は年や月ごとにファイリングし、必要に応じて該当期間の帳簿をすぐ取り出せるようにしておく必要があります。
電子データとして保存する場合は、パソコンやクラウドストレージなどに保存しておけるのでファイリングは不要です。検索機能などが搭載されているソフトやアプリを利用すれば、該当ファイルをすぐに見つけて閲覧することもできます。
電子帳簿保存法の保存要件を満たす必要はありますが、保管スペースも不要になるので、帳簿は電子データで保存した方が便利でしょう。
美容室の帳簿の付け方をしっかりマスターしよう
個人経営の美容室であっても、売上台帳などの帳簿を付けることは法律で義務付けられています。美容室における帳簿の付け方を押さえた上で、取引年月日、取引内容、取引金額などの項目を一定期間ごとに記帳し、しっかりと帳簿を作成しておきましょう。
作成した帳簿は確定申告で必要になる他、経営分析や補助金・融資の申請などにも役立てることができます。帳簿の作成方法は複数ありますが、美容室なら、売上管理機能など多彩な機能を搭載しているサロン専用サービスを利用するのがおすすめです。
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